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認知症とヒトの脳のつくりと働き

認知症と脳

認知症は脳の病気です。

認知症の理解には、基本的な脳のつくりと働きについて理解しておくことが非常に役に立ちます。

脳の機能は多岐にわたる上に、難しいこともあるので認知症の実際と関連させて、簡単に紹介します。

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脳がどのように障害されるかは、アルツハイマー型、レビー小体型などでそれぞれ異なります。

逆に、脳の基本的な機能を知り、各認知症ではそれらがどのように障害されるかをり介することで、認知症の中核症状がうまく説明できます。

それによって、中核症状から派生して起こるBPSDに上手に対応できるようになります。

中枢神経としての脳

人のカラダと脳の位置付けとして、中枢神経としての脳がとても大切です。

なぜなら、脳は頭の中にありますが、全身のありとあらゆる神経と連絡し、意識や認知といった高レベルの処理はほとんどすべて脳での処理の結果といっても過言ではないからですす。

中枢神経は、体の末端から送られてきた様々な情報を処理し、その結果に応じて意識・無意識にかかわらず、身体中に指令となる情報を伝達しています。

中枢神経は、以下のように脳と脊髄から成り立っています。

1脳

  • 大脳
  • 間脳
  • 中脳
  • 小脳
  • 延髄

※間脳、中脳、橋、延髄を「脳幹」というふうに分類することもあります。

2脊髄

補足:末梢神経

上記の中枢神経以外の神経は、末梢神経と呼ばれます。

よく耳にする運動神経、感覚神経なども末梢神経に含まれます。

大まかに、脊髄神経と脳神経に分けられます。

また、体性神経と自律神経という分類もあります。

体性神経はさらに、中枢と末梢のどちら向きに情報が送られるのかによって、遠心性と求心性に分けられます。

脳の基本的な働き

脳には、日常生活を営む上で必要な、いろいろな働きがあります。それらは以下のように分類されています。

情動

脳は人の気持ちを作り出しています。

「嬉しい、嫌だ」に始まり「愛しい」や「悲しい」「怒り」といった気持ちは人間らしさの象徴とも言えるものです。

アルツハイマー型認知症においては、情動に関する機能は最後まで存在するとされています。それは、こうした気持ちを作り出すのが、脳の奥の部分(大脳辺縁系)にあるからです。

このことは、認知症の方と関わるとき、相手の気持ちを尊重する関わりを意識し続けられるかどうかを左右することになる、非常に重要なポイントです。

また、湧き上がる情動をうまくコントロールできるかどうかは、前頭葉や大脳新皮質と言われる脳の外側の部分が担っています。これらは、アルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症では、比較的初期から障害されることも重要です。

記憶

経験や、体験は人の頭の中に情報として蓄積されます。

一般に記憶と呼ばれる機能ですが、これらは、記銘、保持、想起に分けられます。

記銘とは、脳の中で経験を情報化し、記憶を貯めておく場所に、その情報を送ることです。

保持は、送られた情報を保ち続けることです。

想起は、保たれ、保存された情報を取り出し、思い出すことです。

これら3つの段階のうち、どれか一つでも障害されると、うまく記憶することができなくなり、日常生活や社会生活において混乱が見られるようになります。

記憶には、記銘、保持、想起のそれぞれに、様々な脳の領域が関わっているため、認知症では障害されやすいと考えられます。

また人の脳は偽の記憶を作り出すことがあることが知られています。こうした機能が、過度に働くことによって妄想が活発になると考えられます。

随意運動

ヒトが意識して体を動かすことを随意運動と言います。

これは、人間が社会生活を行う上で最も重要な機能の一つです。

普段意識して行っていないような動きもあります。

例えば、歩いたり、箸を操作してご飯を食べるなどしている時のことを考えてみてください。歩くときに、膝や足首の曲がり具合や体幹の軸などを意識して歩いていますか?

歯を磨いている時、あなたの手は自動的に往復運動を繰り返しているのではないかと思います。

しかし、これらは、もともとは随意運動として意識して行われていたものが、繰り返すうちに学習され、自動化されているのです。

では、随意運動がうまくいかない場合というのは、どういう状況でしょうか?

例えば、脳卒中などで麻痺が生じるような場合がそれに当たります。

脳卒中になる前のように体を動かそうと意識しても、動かせないのです。

また、そのような場合、自動化して行っていた動きが、いちいち意識しなければ実現できなくなります。

血管性認知症では、合併症として極めてよく見られる症状です。

認知症の進行に伴って見られる混乱やBPSDの中にはこのような、これまで無意識で行うことができていたものが意識的に行おうとしてもうまくいかなくなって生じるものが少なくありません。

これらに関しては、動作を繰り返し練習して、神経回路を再構築し、再び運動が行えるようにしたり、手すり・歩行器、歯ブラシなどの工夫といった環境設定などによって混乱を少なくしていくことが必要になります。

感覚の処理

人の感覚としてポピュラーなものに、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚といった5感があります。

それ以外にも、人間が感じることができる感覚には、自分の体の関節の曲がり具合や暑さ寒さ、平衡感覚など様々なものがあります。

そうした情報を統合することによって、クオリア(質感)を脳の中で再現したり、それを言葉に置き換えて表現することが可能になります。

認知症の進行や老化によって、感覚の鋭さは失われていくと言われています。

すなわち、脳への刺激量が減少している可能性があり、それが感覚に関連する脳の神経伝達のネットワークの数を減少させることになり、さらなる感覚の鈍感さを生み出すという悪循環(負のフィードバック)を引き起こすと考えられます。

そのため、積極的に人と関わる機会を持ったりといった社会参加を行ったり、リハビリテーションなどを通して刺激的な生活を送れるような工夫が必要になります。

 

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