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*

帰宅要求の分類を考える

   

自分の経験から帰宅要求を考えてみます。

前提

まずは、帰宅要求とは、

当事者の方が

「家に帰りたい」

と訴えること

です。

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しかし、この帰宅要求は時期や個人要素などによって、質的に異なるようです。

その分類を試みます。

帰宅要求が聞かれる時期

①入院・施設入所直後に聞かれる帰宅要求

怒りと興奮が強く見られます。

時に暴力行為も伴いながら激しく、

「騙された。」「ここにいてはいけない」

と訴えられます。

②1か月以上経過した後に聞かれる帰宅要求

焦燥感を伴って、

「帰らなければならない」「一旦帰って、また戻ってくるから」

と訴えられます。

③時間や場所を選ばず聞かれる帰宅要求

自宅で聞かれるのはこのタイプです。

強い混乱を伴い

「家に帰る」

と徘徊されることが多いです。

背景と対応

上記の帰宅要求について、背景としかるべき対応と考えられるものについて書きます。

①入院・施設入所直後に聞かれる帰宅要求

背景

「騙された」という言葉からも分かるように、病識の無さと見捨てられたという思いがあります。

それらによって、やるせ無さや深い悲しみを感じておられることは想像に難くありません。

そうした思いを発散する手段として、暴力行為が見られることになります。

対応

病識の無さに対して働きかけることは困難ですし、見捨てられたという思いに応えるのは、家族の言葉以外にありません。

他人である、ケアスタッフにできるのは、ただ共感を示し、傾聴するだけです。

とにかく、味方であって、敵ではないこと、この場所がご本人様のための場所であり安心できることなどを誠意を持って伝えるしかありません。

そうすることで、薬物の使用を必要最低限に抑えることができると考えられます。

②1か月以上経過した後に聞かれる帰宅要求

背景

やはり基本にあるのは病識のなさです。

しかし、それに加えて、長年の生活パターンが色濃く影響します。

例えば、家で家族の面倒を見ていたとか、姑さんにあれこれ言われていたとか。

旦那や嫁が家に居るから帰らなければならない、など。

対応

やはり、病識のなさに対応するのは困難です。

ですから、まずは、当事者さまの生活背景を調査・理解することが大切です。

これによって、どのようなことに焦りを感じているのかを理解することができます。

それがわかれば、安心感を得られるような声かけや証拠を示せばよいです。

例えば、嫁が家に居るから帰らなければというお爺様に対しては先手を打って、「家族さんには連絡をしておきました。たまには、ゆっくりと一泊してきてくださいとのことです。」と伝えると、安心され、真実を伝えることによって生じるストレス状態を回避することができます。

 

③時間や場所を選ばず聞かれる帰宅要求

背景

おそらく、見当識に重大な障害があります。

自分がどうしているのか、どこにいるのか、自分を客観的に把握することができません。

当然病識もありません。

対応

声かけは、混乱を強める可能性が高いです。

言語的に理解・把握することが難しいからです。

例えば、自宅にいるにもかかわらず「家に帰る」と言われる方に、「家はここですよ」と言ってもそれが実感できない以上無意味です。

一番良いのは、隣に立って気の済むまで歩き回ってもらうことです。

疲労感を感じれば自然と、休みたくなるのが人間です。

見当識に働きかけるよりも、休めるような結果に繋がるような、行動を促しましょう。

まとめ

どの対応にも共通して大切なのは、ご本人さまの根底にある思いを汲んで、それを傷つけないように応対できることです。

帰宅要求への対応として最もまずいのは、病識のなさに対して直接的に「あなたは病気なんだから」と事実を叩きつけることです。

その言葉を告げた時点で、対象者にとっては「困ったことをいう敵」となってしまいます。

時間や仕事量の制約で難しいのは重々承知なのですが、なるべく、そういう対応をするように心がけています。

 - 提言, 臨床, 認知症ケア

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